ガスによる細胞制御

一酸化窒素(NO)は、多数の生理学的・病理学的状態において重要な役割を果たしており、主に細胞間および細胞内のメッセンジャーとして機能しています。しかし、NOによる生理的機能に関しては、時・空間的にNOを制御する技術がなかったため、明らかにすることが困難でした。

この課題を解決し、NOによる生理機能のメカニズムを解明するために、iCeMS古川グループとの共同研究で、NOの時・空間制御を可能にする新しいプラットフォームの開発に取り組んでいます。この新しいプラットフォーム開発には、多孔性材料(PCP)マイクロ流体デバイスの2つの最先端技術を融合する必要があります。

まず、有機配位子と金属イオンからなるPCP、Nitric oxide framework (NOF)は、NOを供給できる分子を構成配位子として持っています。よって、このNOFは非常に微小な空間にNOを貯蔵することが出来ます。また、このNO供給分子には光に応答してNOを放出できる仕組みを施してあり、NOFに光を照射したときにNOだけを放出することが可能になります。このような光活性固体をマイクロ流体デバイスに固定化することにより、適切な環境下で培養された細胞に対して、時・空間的に制御されたNOを印加することが可能になります。

この様な材料科学、微細加工技術、細胞生物学の融合は、これまで困難であった気体による細胞制御機構を明らかにし、ガスバイオロジーという新しい研究分野への扉を開くことが出来ます。


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